Ryo Koizumi / 小泉 遼

小泉は、西洋の芸術、哲学と同時に、東洋思想、特に禅からの影響を大きく受けた作品を制作している。身体的な反復の中で内省を深め、自己の存在と向き合うという禅的行為を通して、存在、光、多義性、他者との関係性を探求する。

活動初期から取り組んでいる「enso」シリーズは、他のシリーズの原型ともなる最も根源的な作品である。庭、東洋思想、哲学、カリグラフィーなどの要素を取り入れ、一筆一筆の行為を通して自身の存在を投影している。

色彩を探求し、光を主題とする「Halo」シリーズでは、光を絵画という物質的な場にとどめることで、存在の確かさと揺らぎが同時に立ち現れる場をつくり出している。

動と静、衝動と秩序、身体性と構造性、ストリートと美術、西洋と東洋といった対立や矛盾を内包する「locus」シリーズでは、多義的な意味が表現されている。

“私”という存在の痕跡として描かれたキャンバスに対し、木材・金属・石といった素材が異なる時間軸の中で形成された他者として位置づけられる「Fragment」シリーズでは、自己が他者との関係性のなかで立ち現れていく様子が示されている。

「Resonant Field」シリーズにおける身体を伴う反復により一筆一筆線を描く行為は、内省を深め自己の存在と向き合う過程となり、禅の修行にも通じる。円環構造の中で反復される筆致は差異を生じつつ時間の痕跡として蓄積し、緊張と静的な力を帯びる。場に立ち現れる力と間、自己と他者の関係において共鳴する作品の中では、存在は固定されず、関係性の中で揺らぎ続ける。

Koizumi’s practice is deeply informed by Western art and philosophy, yet profoundly rooted in Eastern thought—specifically the principles of Zen. Through the Zen-like discipline of physical repetition and rigorous introspection, he explores the essence of existence, light, ambiguity, and the intricate dynamics of the “Other.”

The “enso” series, a cornerstone of his practice since its inception, serves as the fundamental archetype for his entire body of work. By weaving together elements of landscape gardens, Eastern thought, philosophy, and calligraphy, Koizumi projects his very being into every individual stroke.

In the “Halo” series, where light is the central protagonist, he captures luminosity within the material realm of the canvas. This creates a space where the permanence of existence and its inherent instability coexist in a delicate, visual tension.

Through the “locus” series, the binary and contradictory elements are encompassed: movement and stillness, impulse and order, physicality and structure, the street and fine art, Western and Eastern perspectives.

In “Fragment,” the canvas acts as a trace of the “Self,” juxtaposed against materials such as wood, metal, and stone—elements that exist as “Others” shaped by distinct timelines. This series illustrates the emergence of the self through its relationship with the external world.

The act of repetitive physical line-making movement in the “Resonant Field” series is a meditative process and internal reflection, akin to Zen practice. Each stroke, repeated within a circular structure, accumulates as a temporal trace accompanied by slight differences, imbuing the work with a quiet, static power. In this resonance between self and other, existence remains fluid—never fixed, but constantly fluctuating within a field of relations.

고이즈미는 서양의 예술 및 철학과 동시에 동양 사상, 특히 ‘선(禅)’으로부터 깊은 영향을 받은 작품을 제작한다. 신체적인 반복 속에서 성찰을 심화하고 자기 존재와 마주하는 선적(禅的) 수행을 통해 존재, 빛, 다의성, 그리고 타인과의 관계성을 탐구한다.

활동 초기부터 이어온 ‘enso’ 시리즈는 다른 시리즈의 원형이 되는 가장 근원적인 작업이다. 정원, 동양 사상, 철학, 서예 등의 요소를 결합하여, 한 획 한 획의 행위 속에 작가 자신의 존재를 투영한다.

색채를 탐구하며 빛을 주제로 하는 ‘Halo’ 시리즈에서는 빛을 회화라는 물질적인 공간에 머물게 함으로써, 존재의 확신과 흔들림이 동시에 발현되는 공간을 창조한다.

동(動)과 정(静), 충동과 질서, 신체성과 구조성, 스트리트 아트 과 순수 미술, 서양과 동양이라는 대립과 모순을 내포하는 ‘locus’ 시리즈를 통해 다의적인 의미를 표현한다.

‘나’라는 존재의 흔적으로 그려진 캔버스와 대조적으로, 나무·금속·돌과 같은 소재를 서로 다른 시간축 속에서 형성된 ‘타인’으로 위치시킨 ‘Fragment’ 시리즈에서는 자아가 타인와의 관계 속에서 서서히 드러나는 양상을 보여준다.

‘Resonant Field’ 시리즈에서 신체를 동반한 반복을 통해 한 줄 한 줄 선을 긋는 행위는 성찰을 심화하고 자기 존재와 마주하는 과정이 되며, 이는 선의 수행과도 닿아 있다. 원환 구조 안에서 반복되는 필치는 미세한 차이를 생성함과 동시에 시간의 흔적으로 축적되며, 긴장감과 정적인 에너지를 띠게 된다. 공간에 나타나는 힘과 여백(間), 자기와 타인의 관계 속에서 공명(共鳴)하는 작품 안에서 존재는 고정되지 않고 관계성 속에서 끊임없이 유동한다.

西村智弘 (美術評論家)
小泉遼は、画家として少々変わった経歴の持ち主である。小泉は十年ほど庭師をしたあと、カリグラフィーを経て絵画に向かっている。とくに庭師の経験は、原点的な意味をもっていたようだ。彼は、西洋の芸術や思想から影響される一方、東洋思想、とくに禅から影響を受けている。日本庭園は禅の考えで作庭されることが多いが、庭師の経験が禅との接点をつくっていた。
もうひとつ、小泉の絵画を考えるうえで重要な出来事は 2011 年の東日本大震災である。当時、彼は福島にいて庭師をしていた。震災を目の当たりにした彼は、死を身近なものに感じるようになり、そこから生の意味を問い直すようになった。表現の可能性を模索するなかで出会ったのがカリグラフィーである。
カリグラフィーとは文字を美しく見せる技術だが、小泉が魅了されたのは無心に線を引くことだった。本来、禅とは悟りを得るための修行である。繰り返し線を描く作業は、禅の修行と重なるところがあり、自分の本質や存在を見つめることにつながった。内省を深めた結果、線を描くことが表現としての強度をもつようになり、それが絵画に発展している。
小泉が手がけた〈enso〉〈Halo〉〈Locus〉シリーズのうち、〈enso〉が原型になっている。〈enso〉は、丸を一筆で描いた禅画の「円相」から着想を得ていた。作品ごとに色はあってもすべて単色なのは、円相が墨一色であることに基づく。円相は、悟りや真理などの象徴といわれる。始まりも終わりもなく、角に引っかからない線は、仏教が教える捉われのない心、執着からの解放を表わすともいう。また、円窓と書いて「己の心を映す窓」という意味で用いられることもある。〈enso〉は自身と向き合い、己を見極めるための絵画でもあった。
〈enso〉では、カリグラフィーの基本形を反復して円環構造をつくっている。 厳格な制作プロセスに基づくが、ここには偶然性が大きく関与していた。手描きである以上、同じ形を描いても線がブレて微妙なズレが生じてしまう。小泉は、意図を超えて生じてしまう偶然的な差異に表現の根拠を見いだした。ここからわたしが思い出すのはエリック・サティの《ヴェクサシオン》である。ごく短いフレーズの曲だが、840 回繰り返すように指定されていた。音楽家のジョン・ケージが 1963 年におこなった初演は 20 時間かかったという。しかしケージは、「二度と同じ演奏はなかった」と語っている。演奏者が疲れたりミスをすることで、偶然的で微妙な差異が生じてしまい、これが反復に変化を与えていた。ケージの発想は禅から影響を受けているだろう。かつて彼は鈴木大拙の講義に通い、禅を学んだ経験があった。
ジャンルは異なるが、小泉とケージには反復と差異をめぐる共通した美学がある。小泉に特徴だったのは、反復が自己を反省する行為と結びついたことである。反復に差異が生じるのは、描くことが身体的な行為だからである。小泉は、身体が不可避的に引き起こしてしまう偶然的な差異に、今ここにしかない自身の痕跡を見いだした。小泉の方法はきわめて禅的である。自己が消滅したところに己を見いだしているからである。いわば彼は、自我ではなく無我を形にしていた。
〈Halo〉は後光や光輪を意味する。円のモチーフは〈enso〉を連想させるが、単色の〈enso〉に対し〈Halo〉では色彩の豊かさが追求されていた。また、〈enso〉が自己に沈潜する内向性をもつのに比べると、〈Halo〉は他者に開かれた外向性が認められる。鑑賞者は、絵画に向き合うことで光のなかに入っていく。〈Halo〉は体験する絵画であって、光自体を身体的に感じることが求められている。
〈Locus〉は「軌跡」という意味だが、自分を形成してきたものの軌跡を振り返る作品でもあろう。対立的な要素が混在し、画面のなかで拮抗している点に特徴があった。画面の背後には、〈enso〉を思わせる同心円が描かれている。左端にはカリグラフィーの激しい筆致が描かれ、この動的なイメージに対し、右端には規則正しく描かれた垂直のラインがスタティックに存在する。この垂直線は、背後の円形のフィールドを分割ないしは結合していた。
さらに、〈Locus〉には抽象表現主義のイメージが重ねられている。左側の激しい筆致はアクション・ペインティング、右側の垂直線はバーネット・ニューマンの「zip」を連想させる。アクション・ペインティングとカラーフィールド・ペインティングという抽象表現主義の対照的なスタイルが対比されていた。ここには欧米の現代美術、とくにモダニズム絵画についての考察がある。〈Locus〉には、東洋と西洋、静と動、グラフィックとファインアートなど、さまざまな要素が対比されている。小泉は、自分のなかに見いだされる矛盾をさらけだしているようだ。しかし彼の目的は対立を示すことではなく、矛盾する要素をありのままに引き受けることで、対立を超えた何かを生みだすことにあるだろう。
小泉の絵画の特異性は、従来の絵画の価値観と異なるところで表現を模索していることにある。一見すると静謐な画面には、規範的な絵画の枠に収まらない大胆さがある。小泉は東西の芸術を融合しつつ、絵画の可能性を静かに切り開いている。


RYO KOIZUMI

Born in 1985, Fukushima, Japan
Graduated from Ibaraki University

CV

2026
「ART OSAKA 2026」(SH GALLERY / Osaka, Japan)
「Art Fair Tokyo 2026」(SH GALLERY / Tokyo, Japan)

2025
「ReconstructionSolo Exhibition」(SH GALLERY,Tokyo, Japan)
FOCUS Art fair (Saatchi gallery/ London, United Kingdom
Kiaf SEOUL 2025(COEX, Seoul, Korea)
Group Show | OIL SELECTION (Oil by 美術手帖gallery, Tokyo, Japan)
「Art Fair Tokyo 2025」(SH GALLERY / Tokyo, Japan)
「A RAY OF LIGHT Solo Exhibition」(SH GALLERY SEOUL, Seoul, Korea)

2024
artKYOTO2024 (Shosei-en, Kyoto, Japan)
Kiaf SEOUL 2024 (COEX, Seoul, Korea)

2023
「 Solo Exhibition BREATH」 (SH GALLERY SEOUL Seoul ,Korea)
「 1st GROUP EXHIBITION」(SH GALLERY SEOUL Seoul ,Korea)
「KIAF Seoul 2023」 (COEX 1F, Hall A&B, Grand Ballroom Seoul ,Korea)
「Hankyu Art Fair 2023」 (Hankyu Umeda Gallery Art Stage, 9th floor)
「 FURLA x Ryo Koizumi」(ISETAN SHINJYUKU store / Tokyo, Japan)

2022
「時代の一片/ Piece of the times」(Ginza Tsutaya GINZA ATRIUM)
「Solo exhibition, LOCUS」(SH GALLERY / Tokyo, Japan )
「ART BUSAN 2022」(BEXCO 1, Busan,Korea)
「ART Fair Tokyo 2022」( SH GALLERY/ Tokyo, Japan )

2021
FURLA collaboration event, ISETAN, Tokyo
Solo exhibition, LUMINOUS, SH GALLERY, Tokyo
ART FAIR ASIA FUKUOKA 2021, SH GALLERY, Fukuoka
Group exhibition, SH GALLERY GROUP EXHIBITION, SH GALLERY, Tokyo Group exhibition ,100nin10, Tokyo
Solo exhibition, en, Firsthand, Tokyo

2020
Solo exhibition, en, NFACES, Toyama
Solo exhibition, en, fons, Nagoya
PIERRE HERMExTara Jarmon collaboration event, PIERRE HERME PARIS Aoyama, Tokyo White atelier by CONVERSE collaboration
Chupa Chups Live paint, RELISHxCOIN PARKING DELIVERY, Shibiya109, Tokyo

2019
「Solo exhibition, en」(Revolution, Sendai ,Japan)
「dunhill collaboration event」, (dunhill Ginza, Tokyo , Japan)
「Solo exhibition, en, 」(ONIJUS COFFEE VILLAGE, Osaka ,Japan)
「GREENANDBLACKSMITH」 (LOBBY, Tokyo ,Japan)

2018
「NHK historical drama, SEGODON」,Title design


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